狭小エリアの人流および「興味関心」データを分析し 開発中の新規商業施設の価値提供を創出することに活用
導入前の課題について
舟本様:
既存の商業施設であればポイントカード会員様の購買行動などを分析したうえで、商品をレコメンドすることで買い増しを促進するカスタマーリレーションシップマネジメントが行えます。しかし、新規の施設開発にあたっては既存顧客という概念がありませんので、どうやってターゲット層を絞るのか。あるいは、そのエリアで生活なりお仕事されている方々が、どのようなことに困っておられるのかを測りようがありません。
そこで、これまではWebアンケートを実施した後にグループインタビューを実施して、さまざまな意見を伺いながら新たな施設の価値提供について検討するという地道な作業を行っていたんです。ただ、このケースは、例えば商圏が20kmとか、何十万人をターゲットにしたものなのです。
ところが今回、新たに開発を計画しているのが競合ひしめく梅田地域の小規模施設なため、広域からの集客は難しい。むしろ、日常的に施設の前を通られる方がターゲットであり、その方々に寄っていただくことが、まず達成すべきことであろうと考えました。そうなりますと調査すべき人数の分母が小さくなりますので、既存の調査方法は現実的ではありません。それに代わるデータ分析の方法を模索していました。
導入の経緯について
舟本様:
商業施設におけるポイントカード会員様の購買データ解析について共同で研究を行っていたKDDIグループ会社の方よりご紹介いただいたのがKRDCでした。
auユーザーの人流データや購買データだけではなく、興味関心事までわかるということで、まさに願ったり叶ったりのサービスだと感じました。また、今回の新規施設のための分析だけではなく、次なる大阪エリアの開発においてターゲティングの設定であるとか、ターゲット層の興味関心事の調査にも活用できるのではないか。
それに加えて、弊社では他社デベロッパー様に向けて、マーケット調査や、提供するべき価値の顕在化などのコンサルティング業務も行っていますので、KDDIさんのデータ分析等を組み合わせることで、さらにコンサルティングの精度を高められる可能性を感じて、導入を決めました。
採用の決め手について
舟本様:
先ほども申し上げましたが、既存の調査方法が現実的ではない中、人流分析、性別や年齢、年収などのデータはもちろんのこと、特に興味関心事のデータを入手できる点がポイントでした。
その中でも、年齢層や属性別の興味関心事についてのデータを調べられるだけではなく、他の年齢層との比較もご提示いただけるということでしたので、そこも決め手の一つになりました。
JR大阪駅ご利用者の各性年代における興味関心トップ20が明らかに。 定量データだからこそ、見えたものもある。
調査期間、具体的な活用方法を教えてください
舟本様:
調査期間自体はすごく短かったですね。通常、定性的なグループインタビューなどの調査を行う場合は、半年近くかかってしまうのですが、今回は2ヶ月ほどで終了しました。改めてデータ分析はすごいなと感じましたね。
具体的には、「興味関心データ」の分析を実施したのですが、99項目にのぼる興味関心事のランキング付けを行いました。弊社がお願いしたターゲット層において、その順位をお示しいただき、かつ性別と年齢による比較、特殊性をピックアップしていただきました。今回、40代の女性をターゲット層にしたのですが、該当する方々の興味関心事がトップ20のランキングとして明らかになったことに加え、その特殊性が5つほど明らかになりました。
導入の成果は?
舟本様:
これまで定性的なグループインタビューを実施していた時には、1人の方の発言に対して周りの方が「たしかに」と賛同した意見は、提供すべき価値であると考えて抽出していました。一方、意見として上がっても周りの方の反応が少ないものは排除してしまう傾向にありました。
今回のKRDCによる分析では、興味関心事をランキングの20位まで抽出していただきました。当然重要なのは上位ランキングなのですが、意外と10位や11位のものにも一定の投票数がある。おそらく定性的な調査であれば省かれてしまうと思うですが、事実として一定の投票数があるわけですから、採用するかどうかは別にして参考材料が増えたことは良かったと思いました。
今回はトライアル的な意味合いも持つ初めての取り組みですが、分析結果には満足しています。今回のデータはさらに掘り下げた分析を行う前提でいただいており、今後の可能性を感じたという観点を含め満足度が高いです。このサービスをどうブラッシュアップさせるかは、こちらの腕次第という側面もあると感じています。お互いの価値をうまく共創していけたならKRDCの可能性は、さらに広がっていくと思います。
【今後の活用について】
舟本様:
興味関心事に関するデータは入手できましたが、より精度の高いクラスタリングを行うことで、もっと消費者の意識を掘り下げられる可能性を感じています。
例えば、何に興味関心があるのかは事実としてわかったうえで、その関心事は既に満たされているのか。関心はあるけれど満たされていないのか。あるいは、興味関心はあるが購買実績に反映されていないとか、実際に購買行動にも反映されているとか。まだ購買行動に移っていないのであれば、その意識を刺激する施策を提供できれば売上向上に寄与することもできるのではないかと考えています。
今回活用させていただいたKRDCは商業施設に特化したものではなく、さまざまな企業が使える汎用性の高いサービスだと思いますが、商業施設用にデータ分析を掘り下げていき、それを流用できるのであればコンサルティングビジネスの協業も可能なのではないかと感じています。
今、商業施設はECに押され気味ですが、やっぱりリアルな売り場は楽しいと消費者に思っていただき、リアルな売り場の体験価値の最大化につながっていけば、世の中のためにもなるのではないかという気がしています。
(取材月 2024年11月)